2014年11月26日水曜日

映像上映会 「レバノン1949」











































AA研の同僚、黒木英充さんを代表とする科研費研究課題で、
来月11日に
上記映像上映会を開催します。

いかにもコアな企画で、映像自体が貴重なうえに、飯島みどりさんの全体解説&黒木さんの上映並行解説とは、
鑑賞者にとり贅沢なかぎりです。

黒木科研には、西アフリカ諸国のレバノン系コミュニティ担当ということで、私も一員に加わっており、脱植民地期、フランス第四共和政下の西アフリカ植民地と宗主国の関係を考えるうえでの、いわば第三の中継ポイントとして、「レバノンの1949年」はじつに重要な位置を占めています。

以下、案内文の一部を転載します(上掲ポスターも、クリックで拡大できます)。

 1949年秋、メキシコからレバノン移民の家族がレバノンに一時帰国しました。父親が持参した16ミリフィルムのカメラは、里帰りに胸弾む家族の思いと、独立後間もないレバノンの初々しい姿をとらえていました。このたび、メキシコ国立フィルムセンター(Cineteca Nacional)によるフィルム修復作業のおかげで65年前の映像が甦り、上映が可能となりました。

本会は、この貴重な映像記録(白黒/カラー 48分)を通して、独立後いまだ数年にして、活気に満ち溢れるレバノンの「原風景」とそこに生きる人々当時の大統領や首相も登場しますの表情を間近にご覧いただき、レバノンとレバノン移民の過去と現在に思いを馳せる機会です。ふるってご参加ください。

日時:  20141211日(木)19:00-20:40 (開場18:30
会場:  千代田区立日比谷図書文化館 4階 スタジオプラス(小ホール)
        千代田区日比谷公園14号(旧・都立日比谷図書館)
          東京メトロ丸の内線・日比谷線・千代田線「霞ヶ関駅」、都営三田線「内幸町駅」より
徒歩3   http://hibiyal.jp/hibiya/access.html

 プログラム: 
19:00-19:05 開会の辞 黒木英充 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
19:05-19:25 フィルムが甦るまで 飯島みどり (立教大学)
19:25-20:15 映像(サイレント、48分)上映と並行解説 黒木英充
20:15-20:35 質疑・懇談
20:35-20:40 閉会の辞 石垣泰司 (日本レバノン友好協会会長)
    
参加費: 無料
事前申し込み: 不要

アーイダ・フーリー氏:
フィルムの所有者は、メキシコシティ在住の画家でレバノン移民2世のアーイダ・フーリー(Aida Jury)さんです。
この貴重なフィルムのデジタルコピーを提供くださり、上映も許可してくださいました。
この場をお借りして厚く御礼申し上げます。  (了)

2014年11月14日金曜日

北川勝彦・高橋基樹 編 『現代アフリカ経済論』


アフリカ経済の動向を正面から見据える
最新の本格的論集が刊行されました。

北川勝彦・高橋基樹 編 『現代アフリカ経済論』
  ミネルヴァ書房、2014年10月15日発行。


「ほんの10年前まで、アフリカ経済を見るまなざしは、
この大陸の停滞と周縁化に向けられていた。

しかし近年アフリカの全域で成長率の向上が見られ、
アフリカ経済の変容や豊かな将来性に関心が集まりつつある。

他方で、未だに世界で最も深刻な貧困が残存し、
格差が広がっている。

その意味で、アフリカの姿はこれまでより複雑に
なっているといえるだろう。

そのことを踏まえて、われわれは新しくアフリカ経済を論じるための書物を編むことにした」
                                             (本書冒頭部分より)

アフリカ経済のゆくえを指し示すことばとして、
「成長」と「格差」が、そのつど目まぐるしく交替するかのように併走し、
日本の読書界にもそれぞれの立場からアフリカ入門書が出版されるなか、
アフリカの政治経済研究で第一線の研究者が寄稿した

本書のもつ意味は、きわめて重要に思われます。

狭義の「経済学」に論点を囲い込むことなく、
歴史・経済・社会の多角的な視点をふまえてアフリカ「経済」の動態を解剖するという
本書の方向性も、21世紀のオイコス再考をくわだてる読み手に広く開かれているように感じます。

2014年11月2日日曜日

叢書セミオトポス9 『着ること/脱ぐことの記号論』

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新曜社の渦岡謙一氏から
先日、下記の書物を御贈りいただきました。

日本記号学会 編
『叢書セミオトポス9 着ること/脱ぐことの記号論』
新曜社、2014年10月10日発行。


目次をひらくと、同書の第四部に、元学会長としての
山口昌男先生の想い出を語りあう日本記号学会の方々の座談会記録が掲載されており、今回この本を贈ってくださったことの意味が判りました。

第四部 日本記号学会と山口昌男
「山口昌男先生を偲んで」
吉岡洋・室井尚・立花義遼・岡本慶一 (敬称略)
pp. 157-187

さっそく拝読すると、日本記号学会の発足時における
山口昌男とパース研究者の位置づけや、『記号学研究』創刊号掲載の山口「源氏物語論」とバタイユ「ジル・ド・レ論」との関わりなど、冒頭から興味深い話が続きます。
私にとっての圧巻は、座談会出席者の方々が「大政奉還」と形容する学会長就任以後に、山口先生が次々と仕掛けられた研究大会テーマの概要でした。なかでも、『暴力と戦争』をテーマとした2002年大会で示唆されたという「刑余者」の問題系には、徒党論との関連で、考えさせられるところあり。
同書第三部に掲載されている木下誠さんのドゥボール論も味読。充実の一冊です。