2015年2月11日水曜日

荻野イザベル 「ジェンネとガーナ帝国」

荻野イザベルさんが、先日、クロード・モネの『アイリス』の絵葉書を添えて、御論文の抜刷を贈ってくださいました。

Isabelle Seelemann OGINO
    «Djenne et le Ghana: deux modeles sociaux, et la question du commerce trans-saharien»

タイトルの日本語訳(私の試訳です)を含めた書誌は、
下記の通りです。

荻野イザベル
「ジェンネとガーナ帝国: 二つの社会モデルとサハラ縦断交易の問題」 『中央大学経済研究所年報』第45号(2014年)、413-432ページ。

荻野さんと初めてお会いしたのは、2005年。
『アジア・アフリカ・ドキュメンタリー映画会議 2005』で、 私がコートディヴォワールから映画監督モリ・トラオレを招いて、同国の内戦問題にかんする企画を担当したときのことです。

仏語圏アフリカ文学研究の元木淳子さんを通じ、荻野さんが今回届けてくださったのは、
タイトルからも窺えるように、きわめて専門的な西アフリカ史の考察です。現マリ国内の古都ジェンネと、ジェンネ=ジェノ(旧ジェンネ)の史的関係を手がかりに、とくに後者に代表されるような都市編成の社会モデルから、ガーナ帝国の自生的な成立過程を遙かに推測しようとする試みです。いいかえればそれは、ニジェール川湾曲部を中心に古くから展開してきた交易ネットワークが、歴史的にはサハラ縦断交易に先行していた可能性を意味します。西アフリカ内陸古帝国の成立要因をめぐる議論の枠内では、「アラブ刺激」説の解体にむかうような史的再構成の試みといえるように思います。

荻野さん、十年の時を隔てたすばらしい贈り物を届けてくださったこと、心より御礼申しあげます。