2016年12月2日金曜日

東京外国語大学 『アレクシエーヴィチ氏を迎えて』

先月末の28日、アレクシエーヴィチ氏への名誉博士号授与をかねて、本学で以下の催しが開催されました。

『アレクシエーヴィチ氏を迎えて』
2016年11月28日(月) 14:00-16:00
於 東京外国語大学アゴラグローバル プロメテウスホール

・名誉博士号授与式
・記念スピーチ 「とあるユートピアの物語」
・学生との対話 (司会: 沼野恭子)

アレクシエーヴィチによるこの日の記念スピーチ(というより、格調高い30分におよぶ講演) と、それにつづく学生との質疑応答には、聴衆のひとりとして奇蹟にちかいような感銘をうけました。講演内容もすばらしければ、学生の方々の質問も、すぐさまそれに応ずるアレクシエーヴィチの言葉も見事なものでした。

当日の会場で配付された資料には、
「とあるユートピアの物語」のロシア語と日本語訳が、
全文掲載されています。人間という存在自体に関わる省察を聴き手にうながさずにはいない挿話や思考が随所にちりばめられた作家の言葉に、同時通訳のイヤホンをたよりとしながら耳を傾けていて、つぎの一節にひときわ強い印象をもちました。

[…] 残酷ですが、 人間の苦しみにまさる芸術はありません。ここに芸術の闇があります。私は常に、越えてはいけない一線に近づくような資料(註: 同時通訳者の訳。配付資料の訳文では「限界点の資料」)に取り組んでいます。一対一で現実に挑むのです […]

この講演と「学生との対話」の全容が、国内のいずれかの版元から公刊されることを願うばかりです。