2016年11月30日水曜日

『ニーゼと光のアトリエ』 試写会






































学生限定試写会:ホベルト・ベリネール監督『ニーゼと光のアトリエ』
[日程] 2016年12月13日(火)18:00~
[場所] 東京外国語大学プロメテウス・ホール
[概要] ショック療法が当たり前とされ、精神病院が患者を人間扱いしていなかった時代を背景に、
画期的な改革に挑んだ女性精神科医ニーゼの苦闘を描いたブラジル映画。1940年代のブラジル。
精神病院で働くことになった医師のニーゼは、患者に対するショック療法など、暴力的な治療が
日常茶飯事になっている現実を目の当たりにし、衝撃を受ける。男性医師ばかりの病院で身の
置き場も少ないニーゼだったが、患者を病院の支配から解放するため、患者たちに絵の具と筆を
与え、心を自由に表現する場を与えようと試みる。主人公ニーゼ役は、ブラジルの名女優
グロリア・ピレス。監督はドキュメンタリー出身のホベルト・ベリネール。2015年東京国際映画祭
グランプリ・最優秀女優賞。リオデジャネイロ国際映画祭2015観客賞受賞。
http://maru-movie.com/nise.html

火曜3限「グローバル・スタディーズ」を以前受講していて、ちょうどいま卒論(ベンガル分割反対運動にかんする
タゴールの詩作をテーマとする論考)を執筆しながら、この試写会の実現にむけて努力しているヒンディー語科4年生の方から、上のお知らせを受けました。当日は喜びをもって、鑑賞に出向こうと思っています。作品のトレーラーと、関連記事も、ご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=RlUH_BU3M3U
http://news.infoseek.co.jp/worldcup/article/eigacom_20161009002

2016年11月23日水曜日

Denis Mukwege ヒポクラテスの怒り


 

 紛争下そしてグローバル経済下の、組織的性暴力の実態。
 1996年以来、きわめて不安定な情勢が継続するコンゴ民主共和国東部ブカヴの医師、ドゥニ・ムクウェゲ氏は、組織的な性暴力の被害者となった女性たちの治療と救済に努めてきた人物として広く知られています。
 ムクウェゲ氏の活動をテーマとした長編ドキュメンタリー映画(日本語字幕版)の上映会を、次週11月30日、東京外国語大学現代世界論コースで開催します。入場無料で、他学部・他コースの学生も歓迎します。

 『女を修理する男 - ヒポクラテスの怒り L'homme qui répare les femmes : la colère d'Hippocrate』
   réalisé par Thierry Michel,  1h52m, 2015 (日本語字幕:八角幸雄/監修:米川正子)

 映画上映会+講演会
日時: 2016年11月30日(水) 17:40-20:00
会場: 研究講義棟2階 227教室

 今回の上映会は、「コンゴの性暴力と紛争を考える会」の米川正子さん(立教大学)、そして本コース同僚の
金富子さんのご尽力で可能となったものです。作品は、NHKBS1で今年8月24日に放送された『ムクウェゲ医師の闘い-コンゴ』(50m)の完全版にあたるものです。

 きわめて良質なドキュメンタリーで、問題の深刻さを突き付けてくる映像作品としての出来ばえも見事というしかありません。来場、鑑賞、省察をぜひおすすめします。

 本作のトレーラーもネット上で確認できますが、それ以上に、本作の音楽担当者Edo Bumbaによる下記PVが非常に印象的です。冒頭何十秒かの辺りに、リベリア内戦中の国境の街で自分が何度も出遭ってきたような、雨降る夕暮れの情景が一瞬流れていきます。

2016年11月12日土曜日

『人種神話を解体する』


竹沢泰子さんを共編者とする全3巻のシリーズ論集『人種神話を解体する』が、この秋に東京大学出版会から相次いで刊行されています。

川島浩平・竹沢泰子 編
  『人種神話を解体する3  「血」の政治学を越えて』
  東京大学出版会、2016年9月30日発行。

斉藤綾子・竹沢泰子 編
  『人種神話を解体する1 可視性と不可視性のはざまで』
 東京大学出版会、2016年10月27日発行。


「メディアや文化における「血」の語りの構成を明らかにしつつ、自らの生き方と葛藤によって社会的実在としての人種概念を少しずつ動かし解体してきた、“境界に立つ当事者たち”の姿を仔細に追うことで、人種という表象、人種という知の今後の姿を見る」

「本来見えるはずのない人々の差異は、歴史・社会的にどのように徴づけられてきたのか。人種主義は社会階層、ジェンダー、民族の政治(ポリティクス)とどう複合してきたか。見えない人種が創られていく現場に、近代史と現代、日本とアジア・ヨーロッパ・アメリカの事例から切り込む」
      (それぞれ、3巻、1巻のパンフレット案内文) 

 3巻本の論集にそなわる特色のひとつに、「現代日本社会の諸問題と、世界の人種研究の現在をリンクさせる」点が挙げられています。

 その趣旨をまさに反映するかたちで、たとえば第1巻の第2部から第3部の冒頭にかけて、合州国の「ニグロ」人種判定裁判、天皇制、ロマを題材とする論考が息もつかせず連続しながら繋がっていくその配置に、とりわけ感銘をうけました。

  人種という人間の神話的分類にまつわる自社会/異社会の歴史的基盤を同時並行で掘り返していくうえで、今後欠かすことのできない大きな参照軸になる共同研究の成果だと思います。これはおすすめです。